お菓子の衛生管理
食品(お菓子も含む)の衛生管理については、改正食品衛生法(平成30年6月13日公布)により、食品の製造、流通、販売のすべての段階においてコーデックス※1のガイドラインに沿ったHACCP(ハセップ又はハサップと呼称)手法※2による衛生管理が制度化され、令和3年6月1日から全面適用されています。


※1 コーデックス(CODEX)とは、国連の専門機関である国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)が合同で設置した食品規格委員会(コーデックス委員会)により作成された国際的な食品規格です。
※2 HACCP手法とは、以下のコーデックス(CODEX)ガイドラインに示された7原則12手順に沿って食品の製造、流通、販売過程を科学的に管理し、消費者に安全で安心のできる食品(お菓子)を提供できるように考案された手法です。(詳細は、「HACCP の考え方を取り入れた菓子製造業における衛生管理計画作成の手引書」(令和5年3月30日改定)の【参考資料―1】参照)
- [手順1]HACCPチームの編成
- [手順2]製品についての記述
- [手順3]意図される喫食、利用方法の確認、
- [手順4]製造工程一覧図及び施設の図面の作成
- [手順5]製造工程一覧図及び施設の図面の現場確認、
- [手順6(原則1)]危害要因分析
- [手順7(原則2)]重要管理点(CCP)の特定、
- [手順8(原則3)]重要管理点の管理基準(CL)の設定、
- [手順9(原則4)]重要管理点の管理のモニタリング方法の設定、
- [手順10(原則5)]改善措置の設定
- [手順11(原則6)]検証方法の設定、
- [手順12(原則7)]記録の保存文書策定規定の設定
従前の食品衛生法による衛生管理は、国又は都道府県等が定めた基準を満たしていることが求められていました。
一方、HACCP手法による衛生管理は、例えば、お菓子の製造過程の全工程(仕入れ原材料の決定、その荷受け、保管、洗浄、加工の各段階、包装、梱包、製品保管、出荷)において、お菓子を食べる人の健康に害をもたらす要因(生物学的、化学的、物理的)が存在するか否か、或いは発生する可能性が有るか否かを分析し、危険性がある場合には、最終的にこれら危害要因が食べる人の健康に害を及ぼさないように各段階で管理・排除する手法を検討・設定し、これらを「菓子製造業における衛生管理計画」として文書化するとともに、実際にどう運用し、問題が生じた場合にどう処理したかの記録を保管することが義務付けられています。
しかしながら、HACCP手法をそのまま適用することが困難な小規模な営業者にあっては、その取り扱う食品の特性に応じた取り組みが認められることとなっており、業界団体はそのための衛生管理計画作成の手引きを厚生労働省の助言と確認を受けて作成することとされています。
菓子業界も厚生労働省の助言を受けながら「HACCP の考え方を取り入れた菓子製造業における衛生管理計画作成の手引書」を作成し、平成31年2月8日付で厚生労働省の確認を受けました。この手引書は、政省令の規定に沿ったものとして位置付けられ、この手引書の対象となる菓子製造、販売事業者に対する保健所等衛生管理当局による指導は、当該手引書の内容に沿って行われることとなります。(詳細は、全国菓子工業組合連合会のホームページの該当手引書をご覧ください。)
第三者認証
食品衛生法で義務付けられているのは各事業者がHACCP手法による衛生管理を行なうことであって、その内容、実施状況について客観的な第三者による認証を得る義務はありません。
しかしながら、商取引において第三者による認証を得る必要がある場合には、以下のものがあります。いずれもHACCP手法を適用した衛生管理計画及びその実施状況を認証するものですが、その求める内容、費用は異なりますので、それぞれの特色を踏まえ自社の条件にあった認証機関を選ばれるとよいでしょう。
〈食品全般を対象としたもの〉
ISO22000 | 国際標準化機構(ISO)が策定した食品安全マネジメントシステムに関する規格であり、品質マネジメントシステムに関する規格であるISO9001にHACCP手法を合体した規格となっています。 |
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FSSC22000 | 食品安全認証財団(FSSC:2004年オランダで設立)が、ISO22000をベースに追加要求事項で補強・策定した食品安全マネジメントシステム規格となっています。 |
SQF(Safe Quality Food) | 食品マーケティング協会(FMI:米国)が所有・管理する国際的な食品安全と品質に関するマネジメントシステムであり、HACCPで要求されるCCP(重要管理点)の管理に加え、CQP(重要品質点)の管理についても要求がある規格となっています。 |
JFS-A、B及びC規格 | 食品安全マネジメント協会(JFSM)が策定した日本発の食品安全マネジメントシステム規格です。JFS-AはHACCPの考え方を取り入れた衛生管理中心のベーシックな規格、JFS-BはHACCPの実施を含む衛生管理、JFS-Cはさらに厳密な国際取引に使用される程度の要求を行う規格で、世界食品安全イニシアチブ(GFSI)による承認を受けた国際的な食品安全規格です。 |
〈菓子のみを対象としたもの〉
業界団体HACCP | 全国菓子工業組合連合会が菓子業界の特色を踏まえ、特に中小企業のHACCP導入を促進する観点から策定し、厚生労働省及び農林水産省の認定を受けた「菓子製品の高度化基準」に基づき審査、認定を行っています。 |
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